カメラを買ってから約1ヶ月。これからカメラを持って出かけるときに気をつけるべきことはなんだろうかと考えていました。今の御時世、どこで不審者扱いされるかわかったものではないですしね。
そんなとき地元の図書館で『スナップ写真のルールとマナー』という本を見付けたので、早速借りてみました。
※2020/02/09追記
確認したところ、新しく『SNS時代の写真ルールとマナー』が出版されていました。内容は確認できておりませんが、より時代に沿った写真のマナーについて記述されているものと思います。
『スナップ写真のルールとマナー』の私的ポイント
全体的には、「コンテストに応募する場合や、Webで公開する場合にこんなことがありました。どうすればいいでしょうか。」ということに主題が置かれているようです。
また、帯にもあるように、66のQ&A形式で書かれていて、それぞれの質問に対して松本徳彦氏、毛利壽夫氏、山口勝廣氏がそれぞれ回答していくものです。
私が重要だと思った点を3つまとめます。
1.日常生活で「人にされて嫌なことは人にしない」というのはある種、当たり前のことですが、そういったことは写真撮影においても同じですよ。
2.人物を撮る場合は、できる限りその人に許可を撮りましょう。ただし、特定できないような不鮮明な場合やお祭などの雰囲気を移したい場合は原則的に問題はありませんよ。商業的に使用する場合は許可がいりますよ。
3.有名人を撮る場合、「財産権としての「パブリシティー権」があるので、時と場所によって公開できないときもあるし、公開していいときもありますよ。
その他、建物や動物を撮ったときの事案や、写真を絵葉書などの形で販売する場合などの注意点などがあります。非常に簡潔でわかりやすい本です。
しかし、読みやすさと裏腹に、印象としてはあまりいいものではありませんでした。
気になったのは「
暗黙の了解」についてです。
「暗黙の了解」の不明確さ
この本には「
暗黙の了解」という言葉が随所にでてきます。人によって「
暗黙の了解」は異なるのでしょうが、
そんなんでいいのかよ!と言いたくなってしまいました。
まず「鼎談 スナップ写真はこう撮ろう」より引用します。
「写真家の立場からすれば、撮ることからしか物事は始まらないと思っています。ですから、撮りたいと思ったら撮る。撮ったあとに、にこっとした表情を向けて、相手がいやそうな顔をしたらそれ以上撮らないけれど、そうでなかったら『ああ、これは許してもらえたな』と思って撮る。」(頁186、毛利氏の発言より引用)
「え、ちょっとそれってどうなのよ。」と思ったのは前にこういったケースが紹介されていたからです。
「ケース35 至近距離から無許可で撮影したスナップ写真を公表したい」(頁112~113)のタイトルでお分かりいただけると思いますが、「
無許可で撮影したスナップ写真」についてのケースです。
このケースでは質問者が追い抜きざまに一枚撮って、「(相手が)何も言わないので、こちらも何も言わず、その場を離れた」ということで、このケースでの山口氏の回答の一部を引用します。
「次に相手が『何も言わなかった』ということですが、実際には驚いて声が出なかっただけだと想像できますから、少なくとも、心情を逆なでするようなキャプションやタイトルをつけて公表することは控えるべきです。」(頁113より引用)
前者と後者では、撮り続けたか撮り続けないかという違いもあるのでしょうが、無許可で撮影したという点は同じです。そして相手が何も言わないという点でも共通しています。
しかし、前者では「
暗黙の了解」をとったとみなしています。
例えば、2つのケースで考えてみると状況はまるっきり違ってきます。
1.
観光地ではない普通の街中で、後ろからカシャっと音がして振り向いたとしましょう。そこにカメラを構えた人が立っていたとします。
2.
お祭りのお神輿を見ているときに、後ろからカシャっと音がして振り向いたとしましょう。そこにカメラを構えた人が立っていたとします。
1の場合はまず「何を撮ったのかな?」と思うでしょうし、2の場合は「お神輿を撮ったのかな?」と思うでしょう。
あまり写真に興味のない人ならそんなことを考えると思います。
後ろからの写真に関しては肖像権が関係しないとされていますが、そうは言っても撮られた側としては気持ちが良いものではないでしょう。
時と場所によると集約してしまえばそれまでですが、なんだかすっきりしません。
中でも一番納得がいかないのは「ケース33 注意される以前に撮っていた写真を公表したい」(頁106~107)のケースです。
この質問をまとめると、
保育士さんに連れられた保育園児を撮影した。
すると保育士さんから「撮らないでください」と言われた。
そこで撮影はやめたが、注意される前の写真はとてもよく撮れていた。
発表してはダメか。
おそらく多くの方が「ダメだろ!」ツッコミたいでしょうが、松本氏はこのように回答されているのです。
「その保育士さんから『いままで撮った写真も公表されては困ります』などの注意を受けた場合は別ですが、この場合、そのような注意はされておらず、また、実際『撮らないで』という申し出を承諾し、撮影をすぐにやめたわけですから、撮影行為自体のモラルは果たされており、すでに撮影された写真については言及されていないと考えられます。」(頁107より引用)
信じられません。普通ならそれまで撮った写真を含めて咎められていると考えるでしょう。
というかそもそも、
撮られた写真をすぐに「公表される!困る!」と考える人がいるでしょうか。
TwitterなどのSNSやブログでは気軽に撮った写真が公開されていますが、人に撮らないでくれと言われたものをアップロードするような人は常識外れと言わざるを得ません。それを問題無いとしてしまうのはどうにも納得いきません。
公表する前提で写真を撮る写真家と、基本的には趣味で写真を撮る一般人とでの認識の差は結構溝が深そうです。
※2020/02/09追記
冒頭に記載しましたが、新しく『SNS時代の写真ルールとマナー』が出版されています。
こちらの内容は時代に沿った内容に変わっているかもしれません。私は未確認です。
撮影のためのコミュニケーション
スナップ写真のよさのひとつに、「被写体となる人物がカメラを意識していないこと」と言われます。
国内外問わず有名なスナップ写真家はたくさんいて、私もいろいろな作品を見て感じました。
写っている人物の許可を得る得ないについて、「
暗黙の了解」で済ませてしまうのはどうなんでしょうか。
思えばスナップ写真ではありませんが、カメラの展示会CP+でコンパニオンさんを撮る人たちにもいろいろな人がいました。
いきなりカメラを向ける人、アイコンタクトで済ませる人、「お願いします」と声をかけ「ありがとうございます」と去る人、他人の撮影と同タイミングでカメラを向け去っていく人。
コンパニオンさんの場合は、公表されることもある程度承知の上でしょうが、一般人の場合は違いますよね。いきなり正面にカメラを向けられたら、私なら嫌悪感を抱きます。
撮る側としての私の立場として考えると、コンテスト応募など、公表するかどうかは現段階ではわかりません。しかし、こうしてブログを書き、撮った写真をアップロードしているのですから、人を撮った場合にどうするかを考えなくてはいけません。
はっきり写り込んだ写真は撮らない&公開しないのが一番のトラブル回避にはなることでしょう。いざ撮ったところで許諾を得るために声をかけたら「盗撮!」と言われるかもしれません。(実際に撮っているのですから何も言い返せません。)
カメラ付きの携帯電話、スマートフォンが普及し、誰でも写真を気軽に取れるようになりました。Twitterなど気軽に写真を公開し、それが原因で度々炎上しているのを見ます。
求められるのは撮影者一人一人が「肖像権」などを理解し、写真を撮る場合は理解を得られるようにコミュニケーションを取ることだと感じています。
ちなみに私は今日まで撮影禁止とされていないイベントで、ステージに立っている方以外では人物主体の写真は撮っていません。チキンなのもあり、知らない人に声をかけるのはどうしても躊躇ってしまいます。(うまく撮れる自身もありませんし笑
カメラに慣れるまで、もうしばらくは風景や物撮りをメインに撮り歩くことにします。
2020/02/09追記
カメラを買って6年ほど経ち、「風景や物撮りをメインに」などと言っていた私も、ときどきスナップ写真を撮るようになりました。人が写りこむような写真です。
カメラを構えるときには、通行の妨げにならないように配慮し、他人からも見える位置にカメラを構え、顔が明瞭に写らないように極力注意して撮影しています。
正面から顔が写っているものは撮りませんし、誤解されないようにカメラを構えることもしません。
あくまでも人物主体ではなく、街の風景としてのスナップを心がけています。
また、SNSやブログにアップする際には、後ろ姿やシルエットで顔が判別できないものをアップするように心がけています。
ときどきカップルが絵になるときがあります。どうしても撮りたいと思ったときには、必ず声をかけるようにしています。(その場合には、ジャンルとしてはスナップではなく、ポートレートでしょうか。)
例えば、海でカップルを撮影する場合には、タイミングを伺いつつ声をかけ、「後ろ姿を私のカメラでも撮らせていただけませんか?」とお願いをしています。
撮ったら数枚毎に画面を見せて、変なものを撮っていないことを示します。だいたい「そのデータが欲しい!」と言われたりするので、iPhoneのAirDropでデータをお送りしています。
幸いにしてトラブルになったことはありません。が、これはあくまでも一例で、万人に対して上手くいくとは思っていません。
まとめ
出版から年月が経っていますが、ルールやマナーは普遍的なものでしょうから参考になります。
しかし、いくつか挙げたような問題点もあるように感じました。一つの指針として参考にするのは良いでしょうが、盲信するのは良くないでしょう。
あくまでも、写真を撮る立場からの意見をまとめた本です。スナップ写真は法律的に問題はないのですが、それは法律上の話です。
マナーと法律は異なるということを意識して、様々な事情に配慮して撮影に臨むべきです。
今回の書籍
追記したように、新しい書籍が出版されています。